物理世界への回帰とインフラDX 🤖 Heroku方針転換、人型でない倉庫ロボが1.2億ドル調達(2026年2月9日ニュース)
今週のビジネス・テクノロジーニュースは、AIブームの熱狂の裏で、それを支える「物理世界」の重要性が再認識されていることを示しています。革新的なスタートアップは、もはや画面の中だけでなく、倉庫、実験室、そして地球の奥深くで課題解決に挑んでいます。TeslaのOptimus元責任者が「人型は最適でない」と断じ、倉庫専用ロボットで巨額の資金を調達した事例は、その象徴と言えるでしょう。また、創薬の実験プロセスを完全に自動化するラボや、驚異的な低コストで水素を生成する新技術も登場し、産業の根幹を揺るがすイノベーションが加速しています。一方で、PaaSの草分けHerokuの事実上のメンテナンスモード移行や、ソニーのBDレコーダー事業撤退は、一つの時代の終わりと新たな市場へのシフトを物語っています。今、ビジネスの主戦場は、クラウドの向こう側にある物理インフラへと回帰しているのかもしれません。🛰️
Herokuが事実上のメンテナンスモードへ移行、新機能より安定運用を重視
PaaS(Platform as a Service)の草分け的存在であるHerokuが、事実上のメンテナンスモードへ移行することを発表しました。今後は新機能の導入よりも、プラットフォームの安定性、セキュリティ、信頼性、サポートに重点を置く「持続的エンジニアリングモデル」に移行するとのことです。この戦略転換の背景には、親会社であるSalesforceがエンタープライズ向けAI分野へのリソース集中を進めていることがあります。多くの開発者に愛されてきたHerokuのこの大きな方針転換は、クラウド開発プラットフォーム市場の成熟と、巨大テック企業がAIを最優先事項とする現在の業界トレンドを象徴する出来事と言えるでしょう。既存ユーザーにとっては安定運用の継続が約束される一方、PaaS市場における勢力図の変化が加速する可能性があります。
Herokuが事実上のメンテナンスモードに移行 新機能の導入より品質と運用の維持に重点
Optimusを間近で見た男の結論は「人型じゃない」——倉庫ロボットMytraが1.2億ドル調達
Teslaの人型ロボット「Optimus」開発チームを率いたChris Walti氏が創業した倉庫ロボット企業Mytraが、シリーズCで1.2億ドルを調達しました。Walti氏は「人間の形は反復的な産業タスクに最適ではない」と断じ、人型とは異なる倉庫内でのパレット運搬に特化したロボットを開発しています。このロボットは、最大約1,360kgのパレットを扱い、通路を排除した高密度な倉庫内で3次元に自律移動します。驚くべきは経営陣で、元Tesla CFOのZach Kirkhorn氏が取締役に就任するなど、Teslaの製造・財務チームが合流。すでに大手食品流通Albertsonsが商用導入しており、物理世界の課題を解決するスタートアップへの期待の高さを示しています。
Optimus を間近で見た男の結論は「人型じゃない」——倉庫ロボット Mytra が1.2億ドル調達
「製薬企業は数百万件の実験を無駄にしている」Medraが5,200万ドル調達、AIロボで創薬ラボを自律化
スタンフォード大学AIラボ出身のMichelle Lee博士が創業したスタートアップMedraが、シリーズAで5,200万ドルという巨額の資金調達を実施しました。同社が取り組むのは、創薬プロセスの完全自動化です。AIが実験を計画し、ロボットがそれを実行、結果をAIが解釈して次の実験を設計するという「lab in a loop」と呼ばれる自律型プラットフォームを開発しています。これにより、従来は「やりっぱなし」になりがちだった数百万件もの実験データを、AIが継続的に学習し、創薬のサイクルを劇的に高速化します。すでに製薬大手Roche傘下のGenentechと提携し、研究者が日常的に使う機器の最大70%を自動化できるとしており、フィジカルAIが研究開発の現場を根底から変える可能性を示しています。
「製薬企業は数百万件の実験を無駄にしている」Medra が5,200万ドル調達、AI ロボで創薬ラボを自律化
中国テック3強が揃い踏み——X Square Robotが1.4億ドル調達、Embodied AIの覇権争い加速
中国・深圳を拠点とするEmbodied AI(物理世界で活動するAI)スタートアップのX Square Robotが、シリーズA++ラウンドで1.4億ドル(約10億元)を調達しました。このラウンドをリードしたのはTikTok親会社のByteDanceと、旧Sequoia ChinaのHongShan。特筆すべきは、これによりAlibaba、Meituanと合わせて中国テック大手3社がすべて出資した唯一のEmbodied AI企業となった点です。同社は、未知の物体でも追加学習なしに操作できる「ゼロショット汎化」を実現した独自モデル「WALL-A」を開発しており、国家戦略として「具身智能」を掲げる中国のAI覇権争いが、ソフトウェアだけでなく物理的なロボットの領域で激化していることを象徴しています。
中国テック3強が揃い踏み——X Square Robot が1.4億ドル調達、embodied AI の覇権争い加速
クラウドの5分の1、8億円の自前データセンターでコストを劇的削減したスタートアップの体験談
クラウド一辺倒の時代に一石を投じる事例が登場しました。自動運転スタートアップのComma.aiが、クラウドなら約39億円かかるところを、わずか約7.8億円で自前のデータセンターを構築・運用し、大幅なコスト削減に成功した手法を公開しました。カリフォルニア州サンディエゴの穏やかな気候を利用した外気冷却システムや、600基のGPUを搭載した自社設計マシン「TinyBox Pro」の活用がコスト圧縮の鍵となっています。この事例は、特にAIモデルのトレーニングなど大量の計算リソースを必要とする企業にとって、クラウドへの依存から脱却し、物理インフラを最適化することの重要性を示しています。
クラウドなら5倍の費用がかかるところを「8億円の自前データセンター」を運用することで劇的コストカットに成功した企業の体験談
水素の価格が90%OFFに?日本でも期待される「人工鉱物水素」という新技術
エネルギーコストを劇的に変える可能性を秘めた新技術が登場しました。米国のスタートアップVema Hydrogenが、世界初となる「人工鉱物水素」のパイロットプロジェクトを開始。この技術は、地下の鉄分を多く含む鉱物と触媒入りの塩水を反応させ、人工的に水素を生成するものです。驚くべきはコストで、従来のグリーン水素(1kgあたり5ドル)の10分の1となる1kgあたり0.5ドルでの製造を目指しています。この技術が確立されれば、データセンターの立地選定やエネルギー政策に革命をもたらす可能性があり、Vema社の地図によれば日本国内にも複数の候補地が存在しています。🏔️
水素の価格が90%OFFに。日本でもあり得る「人工鉱物水素」で脱炭素
ソニー、ブルーレイレコーダー全モデルの出荷を終了し後継機もなしと発表
大手メーカーの事業撤退が、市場の構造変化を浮き彫りにしました。ソニーは、ブルーレイディスクレコーダーの全モデルについて、2026年2月以降、順次出荷を終了し、後継機種も発売しないと発表しました。この決定の背景には、NetflixやAmazon Prime Videoといったオンデマンド型動画配信サービスの普及があります。かつて家庭のエンターテインメントの中心だった「録画して保存する」視聴スタイルから、「必要な時に再生する」ストリーミング型へと消費者の行動が不可逆的に変化したことを象徴するニュースです。一つの時代が終わりを告げ、新たなビジネスモデルへの移行が加速していることを示しています。📺
ソニー、「ブルーレイレコーダー」全モデル出荷終了へ 後継機投入せず
衛星とスマホの直接通信、ドコモ・ソフトバンクも参入し大手3社が出揃う
空からスマホにつながる時代が本格化します。NTTドコモとソフトバンクは、それぞれ2026年度初頭から、衛星とスマートフォンを直接つなぐ通信サービスを開始すると発表しました。これにより、KDDIが米SpaceXと組んで提供する「au Starlink Direct」に続き、日本の携帯大手3社がこの新市場で競い合うことになります。このサービスは、専用端末を必要とせず、既存のスマートフォンで山間部や海上など、従来の基地局の電波が届かないエリアでもテキストメッセージの送受信などを可能にするものです。災害時の通信確保や、アウトドア、海洋事業など、新たなユースケースの創出が期待されます。📡
ソフトバンク宮川社長、衛星とスマホの直接通信を「来年度やる」と明言 ドコモも同日に2026年度初頭の開始を発表
Galaxyスマホ、ついにAirDrop連携へ? プラットフォームの壁を超える新機能
Appleのエコシステムの強みの一つである「AirDrop」が、ついにAndroidスマートフォンでも利用可能になるかもしれません。GoogleとSamsungが、Androidのファイル共有機能「Quick Share」とAirDropの連携をGalaxyシリーズで実現する計画を進めていると報じられました。この技術は、すでにGoogleのPixel 10シリーズで先行実装されており、iPhoneユーザーとAndroidユーザー間でのシームレスなファイル共有を可能にします。これまでプラットフォームの壁によって分断されていたデータ共有が簡単になれば、ユーザーの利便性は飛躍的に向上し、デバイス選択の自由度も高まることでしょう。🤝
AirDropの写真シェア、ついにGalaxyスマホで解禁か?
国と地方、スタートアップのリアルな勝ち筋とは?ディープテックとロールアップ戦略
岸田政権が掲げる「スタートアップ育成5か年計画」が新たなフェーズに入る中、そのリアルな勝ち筋が見えてきました。北海道大樹町を拠点とするロケット開発スタートアップ、インターステラテクノロジズは、自治体との緊密な連携により政府から140億円の補助金を獲得。ディープテック分野における官民連携の成功モデルを示しています。一方で、食産業のような成熟市場では、後継者不在の中小企業をM&Aで束ね、DXを導入して再生させる「ロールアップ」戦略が注目されています。これは、テック系以外のスタートアップにも大きな可能性があることを示唆しており、日本のエコシステムが多様な成長モデルを模索している現状がうかがえます。🚀
考察
今週のニュースを俯瞰すると、テクノロジー業界の関心が、クラウドやソフトウェアといった仮想空間のレイヤーから、それを支える物理インフラや現実世界の課題解決へと「回帰」している様子が明確に見て取れます。Mytraの倉庫ロボット、Medraの自律実験ラボ、Vemaの人工鉱物水素といったスタートアップは、いずれもAIやデジタル技術を駆使しつつ、その主戦場を物理世界に置いています。Comma.aiがクラウドではなく自前のデータセンターを選択したのも、コスト効率と制御性を追求した結果、物理的な最適化に行き着いた好例と言えるでしょう。これは、デジタル化が一巡し、その価値を最大化するためには、現実世界との接点であるハードウェア、エネルギー、物流といった領域のイノベーションが不可欠になったことを示しています。🌍
一方で、PaaSの先駆者であるHerokuの戦略転換や、AV機器の巨人ソニーのBDレコーダー事業からの撤退は、テクノロジー市場の成熟と新陳代謝の速さを物語っています。かつての勝者が安泰ではない時代において、企業は絶えずリソースを成長領域へと再配分しなくてはなりません。その成長領域として、衛星通信やプラットフォーム間のデータ連携といった「インフラの隙間を埋める」サービスが台頭している点は注目に値します。これらの動きは、単一のキラーアプリが市場を席巻する時代から、既存のインフラやサービスを連携させ、より大きな価値を生み出す「エコシステム連携」の時代へと移行していることを示唆しているのかもしれません。💡

